【校正】ひらく漢字の決定版!常用漢字表(H22改正)ほか
「ひらく」とは、校正用語で漢字をひらがなにすることです。
漢字が多い文章は読みにくく固い印象を与えます。ひらがなが多いと平易で読みやすくなりますが、逆に多すぎても単語の区切りが視覚的にわかりづらく、稚拙な印象を与えてしまうことも。
漢字・ひらがな・カタカナをバランスよく配置することで、リズム感がよく読みやすい文章になります。
じゃあ、どの漢字をひらけばいいの?
この記事では、
・絶対ひらくべき漢字一覧
・ひらくかどうか決めておくとよい漢字一覧
・「ひらく」漢字のルール
について解説します。
絶対ひらくべき漢字一覧
私が「作家で編集者」として活動するなかで身につけてきた、「読みやすい文章にするためにはこれは絶対ひらくべき」と思う漢字を一覧としてまとめました。
ただし、文章全体を固い雰囲気にするためにあえて漢字にするのももちろんOK。後述述しますが、文書全体・記事全体・メディア全体で「ひらくか漢字か統一されていること」が大切です。
原則1 「副詞」はひらく!
副詞とは、名詞以外の語句(動詞・形容詞・形容動詞など)を修飾して詳しい意味を添える語です。
副詞に続く動詞・形容詞・形容動詞は一般的に漢字で表記されることが多いため、副詞はひらいて表記するとよいでしょう。
漢字 →→ ひらく〇
一層 …… いっそう
極めて…… きわめて
更に …… さらに
暫く …… しばらく
随分 …… ずいぶん
既に …… すでに
是非 …… ぜひ
大層 …… たいそう
大変 …… たいへん ※「たいへん喜ばしい」など
例え …… たとえ ※「たとえ遅れても」など
偶に …… たまに
時々 …… ときどき
何故 …… なぜ など
ただし、副詞であっても一般的に漢字表記されることが多いものもあります。例外として、漢字表記する副詞の一覧も挙げておきます。
漢字〇
一段と(いちだんと)
決して~ない(けっして~ない)
少々(しょうしょう)
多分(たぶん)
結構(けっこう)
原則2 「接続詞」はひらく!
★太字 接続詞(文と文、語と語をつなぐ語)
及び …… および
且つ …… かつ
従って …… したがって
但し …… ただし
尚 …… なお
並びに …… ならびに
又は …… または など
原則3 「形式名詞」はひらく!
形式名詞とは、実質的な意味をもたず、その節を名詞化するための名詞です。
現在のライター界隈では「~する事」を「~すること」とひらくのが一般的とされています。その理由が形式名詞だからと考えれば、ほかの形式名詞もひらいて表記するのが望ましいですね。
漢字 →→ ひらく〇
~する上で …… ~するうえで
~する事 …… ~すること
~する度 …… ~するたび
~する時 …… ~するとき
~する他 …… ~するほか
~という物 …… ~というもの など
原則4 「補助動詞」はひらく!
★補助動詞(動詞の後について補助的な意味を加える語)
~して行く …… ~していく
~して頂く …… ~していただく
~して置く …… ~しておく
~して下さい …… ~してください
~して来る …… ~してくる
~して見る …… ~してみる など
その他、ひらくのがおすすめの語句
★連体詞(名詞を修飾する語)のうち一部
色々な …… いろいろな
色んな …… いろんな
所謂 …… いわゆる
此の・其の …… この・その
様々な …… さまざまな など
※本来の漢字の意味そのままで名詞を修飾する語は、漢字で書く方が一般的です(例 大きな、小さな、単なる、名だたる、主たる、例の、件の、当の、我が、我らが など)
★副助詞(語にくっついて意味を添える・限定する語)
~位 …… ~くらい/~ぐらい
~等 …… ~など(ただし、列挙して「とう」と読ませる場合は漢字)
~程 …… ~ほど
~迄 …… ~まで など
★ひらがなで表記するのが一般的な語
有る・無い …… ある・ない ※実際にモノの有無を表す場合を除く
予め …… あらかじめ
致します …… いたします
一旦 …… いったん
是非 …… ぜひ
そう言えば …… そういえば
沢山 …… たくさん
出来る …… できる
~と言う○○ …… ~という○○ ※実際に発言している場合を除く
~の様な …… ~のような
共に …… ともに
中々 …… なかなか
良い …… よい ※良し悪しについて表現する場合を除く
ひらく漢字には「ルール」がある
どの漢字をひらくべきかは、一定のルールに基づいて決めることができます。
出版社・メディアごとに存在する「用字用語集」や「表記ルール」
出版社やメディアごとに、「用字用語集」や「表記ルール」を定めている場合もあります。
ライターが受注して記事を書く場合には、クライアント側からレギュレーションの一部としてルール表を提示されることもあります。提示されなかった場合は、「表記の統一について、参考にできる一覧表はありますか?」と尋ねてみるのもよいでしょう。一覧としてまとまったものがなければ、すでに公開されている記事などを参考に、どの漢字をひらくべきかの指針とするのもいいですね。
使いやすいのは、なんといっても『記者ハンドブック』です。第13版のロングセラーで、私も新卒時代に買ったものから買いかえました。
2022年3月には、第14版が発売されています。
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webメディアにおいても、運営者や編集者が用字用語の一覧を用意しておくと、文章に統一感が出て全体の質が上がります。
個人ブログや個人メディアでは「マイルール」を決めておこう
個人ブログや個人メディアにおいても、用字用語の統一は文章の質向上に役立ちます。個人で電子書籍を執筆したり、SNS等で発信したりする場合にも、「マイルール」を決めて執筆するとよいでしょう。
ルールが矛盾したら、基本的にはクライアントのルールを優先
ライターとして仕事をしていると、「自分はこの漢字はひらきたいけど、クライアントからは漢字にするよう指示された」という場面もよくあります。逆もしかり。
自分のルール(というか手癖)と、クライアントのルールどちらを優先すべきか。当然ながら、クライアントの指示は絶対です。執筆マニュアルをよく読み、用字用語集があれば目を通して、納品前にチェックするのがよいでしょう。
ただし、「ここはひらくべき・漢字にすべき」と思う箇所があれば、理由を添えてクライアントに提案するのもよいですね。論理的に意見が言えるライターは、クライアントにも信頼されます。
ひらく漢字の根拠
文化庁「改定常用漢字表(H22)」に含まれない漢字は「ひらく」
ひらくべきか漢字にすべきかの基準として、私は文化庁が定めた「改定常用漢字表(H22)」を用いることがあります。
常用漢字とは、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」(文化庁/常用漢字表 前書き より引用)です。個人的な文章の表記や固有名詞には影響しないものですが、一定の基準としてはとてもわかりやすいです。
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/14/tosin02/index.html
上記のURLから、文化庁HP内にある常用漢字表にアクセスできます。ただし、PDFなので少し使いにくいかもしれません。
「この漢字、常用漢字だっけ?」というシチュエーションで使いやすいのは、以下の常用漢字チェッカーです。ブックマーク推奨です!
「引用」した箇所は表記の混在が許される
ひとつの文章、ひとつの記事、一冊の本のなかでは表記が統一されていることが大原則です。
ただし、引用した文章を含む文章の場合は引用箇所のみ表記が異なっていても問題ありません。
表記の統一は「検索」して総チェックしよう
執筆中から表記の統一を意識することはもちろんですが、最終段階での校正も欠かせません。
出版社やメディアごとのルールがある場合は、用字用語一覧をもとに一字ずつ検索してチェックすると確実です。
WordファイルやGoogleドキュメントなどでは「ctrl+F」で検索ウィンドウを起動できるので、調べたい用語をひらがな・漢字の両方で検索し、すべてきちんと統一しているかチェックしましょう。
動詞や形容詞など活用形がある単語の場合は、活用しない部分のみを検索するとよいでしょう。
例:「出来る」を「できる」に統一したい場合
ctrl+Fで検索ウィンドウを開き、「出来」と入力すれば「出来る」「出来ない」「出来ません」「出来なければ」などを一括して拾うことができます。
ひとつの文章のなかでひらく漢字は統一しよう
ここに挙げたのはあくまで一例であり、私が編集者および作家として身につけてきた原則です。必ずしもこのとおりにひらく必要はありませんが、文書全体・記事全体・メディア全体では、ひらくか漢字かの基準を統一するようにしましょう。